「長期・積立・分散が大事!」
「暴落はバーゲンセール!」
「狼狽売りだけはダメ!」
もう、そんな言葉は聞き飽きた、と思っていませんか?
頭では分かっている。でも、怖いものは怖い。
スマホを開くたびに減っていく資産の数字を見て、心臓がヒュッと冷たくなる。将来のために始めたはずの投資が、今のあなたの心を蝕んでいる…。
その気持ち、本当に良く分かります。なぜなら、こうした「正論」は、嵐で激しく揺れる小舟の上で「落ち着け」と言われているようなものだからです。
なので今回は、5年後の自分が、今の自分に『ありがとう』と言う未来を作るための、具体的な思考の訓練法を紹介します。
方法1:【感情の嵐】「何もしない」を、意図的にやる
まず、暴落が始まったばかりの初期段階。アドレナリンと恐怖でごちゃ混ぜになったこの時期にやるべきことは、たった一つです。
「意図的に、何もしない」
売るなんてもってのほか。そして、意外かもしれませんが「買う」ことさえ、この段階では推奨しません。焦りや恐怖からくる行動は、後悔を生む可能性が高いからです。
では、なぜ多くの人がここで冷静さを失うのか?
それは「投資家の心理サイクル」のど真ん中にいるからです。
「もう終わりだ」「自分だけが損している」という感情は、このサイクルにおける『絶望』や『恐慌』と呼ばれる段階で、多くの投資家が経験するごく自然な反応です。
そして、歴史を振り返ると、百戦錬磨の専門家たちでさえ総悲観になったこの時期こそが、皮肉にも大底(一番の安値)に近いことが多いのです。
あなたは今、パニックに陥っているのではなく、多くの先人たちが通ってきた道の、特定のポイントに立っているだけ。そう客観視するために、まずは意図的に「何もしない」を実践してください。
証券口座のアプリをスマホの2ページ目に移すだけでも、効果は絶大です。
方法2:【防御の姿勢】「なぜ?」を5回繰り返し、本当の目的を思い出す
少し冷静さを取り戻したら、次にやるのは攻撃(追加投資)ではありません。
徹底的に「防御」を固める作業です。それは、自分自身の「投資の目的」という防具を磨き上げること。
そのために、ぜひ「なぜなぜ分析(5Why)」を試してみてください。紙とペンを用意し、自分の投資目的を書き出し、それを5回「なぜ?」と深掘りするのです。
(例:「老後資金のため」)
- なぜ、老後資金が必要? →「子供に迷惑をかけず、豊かに暮らしたいから」
- なぜ、豊かに暮らしたい? →「お金の心配をせず、趣味の旅行を楽しみたいから」
- なぜ、旅行を楽しみたい? →「新しい景色を見て、心を動かされたいから」
- なぜ、心を動かされたい? →「生きている実感を得たいから」
- なぜ、生きている実感が欲しい? →「一度きりの人生を、最高に楽しみたいから」
どうでしょうか。あなたがたどり着いた答えは、もしかしたら『大切な家族との時間』や『誰かの役に立つ喜び』かもしれません。
自分の投資の根っこにあるのは、単なる「お金」ではなく「感動」や「自由」「最高の人生」といった、自分自身の根源的な価値観なのです。
方法3:【未来への準備】自分だけの「投資カルテ」を作る
市場が悲観一色に染まった頃、私たちはようやく未来への準備を始めることができます。
ここで作るのが、「投資カルテ」です。今の自分の生々しい感情や学びを記録することで、これは未来の自分にとって、何物にも代えがたい財産になります。
【投資カルテの項目例】
- 日付: 2025年10月3日
- 市場の状況: 日経平均株価、約3ヶ月で20%下落。「〇〇ショック」と呼ばれ始める。
- 今の正直な気持ち: 「NISAを始めたタイミングが悪すぎた。現金で持っていた友人が羨ましい」
- 今回学んだこと: 「自分のリスク許容度は、資産の15%減が限界かもしれない。こんなに眠れないなんて」
- 次に相場が回復したら、どうするか?: 「ポートフォリオの現金比率を10%から20%に引き上げよう」
このカルテは、ただ怖いだけの暴落を、「自分を知るための、貴重な経験」へと昇華させてくれます。
方法4:【希望の光】出口の見える「時間軸」という事実
出口の見えないトンネルが怖いのは、あとどれくらい歩けば良いか分からないからです。
ここで、歴史を振り返ってみましょう。
過去の歴史をひもとけば、米国株(S&P500)が大きく下落する「弱気相場」は、決して珍しいことではありません。しかし、そこには一つの明確なパターンがあります。
それは、どんな下落も永続したことはなく、その終わりには必ず、下落の痛みを忘れさせるほど力強い上昇相場が訪れてきたという事実です。現に2025年10月までで史上最高値を何度も更新し続けて来ました。
もちろん、今後も同じ道を辿るとは限りません。もっと短いかもしれないし、長いかもしれない。しかし、重要なのは「嵐は、永遠には続かなかった」という歴史的な事実です。
私たちの心は「明日も、1年後もずっと下がり続ける」という錯覚に陥りがちですが、歴史は静かに「No」を突きつけています。
まとめ:嵐は、あなたを強くするために吹いている
保有している株価の下落は、痛みを伴う辛い経験です。
しかし、それは私たちの資産をただ減らすためだけのイベントではありません。
下落相場は、いわば投資家としての自分の幹を太くするための、最高の試練です。
この痛みを伴う試練を乗り越えた時、投資家としての器はひと回りもふた回りも広がり、将来もっと大きな資産を持つにふさわしい、たくましい精神力を手に入れているはずです。
恐怖に震えながらも「狼狽売り」のボタンを押さなかったこと。なけなしの勇気で、いつも通りの「積立設定」を解除しなかったこと。
その一つ一つの「何もしなかったこと」「いつも通りを続けたこと」が、今の私の豊かな生活、そして何より「嵐を乗り越えた」という自信を作ってくれています。
今はただ、この方法を手に、静かに、そして着実に、心と未来を守り抜きましょう。
「でもやっぱり投資って難しそう…」と一歩踏み出せずにいませんか?
最初の一歩は、難しい本より、まずはマンガで楽しく学ぶのが私のおすすめです。


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