「せっかく買うなら、良いものを長く使った方が結局お得だよね」
友人の言葉やSNSの投稿を見て、そう感じたことはありませんか?
丁寧になめされた革財布、美しいドレープを描くコート、寸分の狂いなく時を刻む腕時計…。『#丁寧な暮らし』『#一生モノ』といったハッシュタグと共に並ぶそれらは、確かに魅力的です。
しかし、その一方でこう思いませんか。
- 「みんな、本当にお金に余裕があるのかな…」
 - 「これを買うために、何かを我慢してるんじゃないか?」
 - 「正直、投資に回した方がいい気もするけど…でも、みすぼらしいモノは持ちたくない」
 
私も、以前は「『良いものを長く使う』って、本当にコストパフォーマンスが良いのだろうか?」と半信半疑でした。
今日は、この多くの人が信じて疑わない価値観をテーマに、あえて投資家の視点から光を当ててみたいと思います。
「良いものを長く」派の主張:その魅力と真実
まず、なぜ私たちは「良いものを長く使う」ことに魅力を感じるのでしょうか。その理由は、大きく3つあると私は考えています。
- 長期的なコスト比較で「割安」に見える: 5,000円で1年しかもたない靴より、50,000円でも10年使える靴の方が、10年スパンで見れば「お得」に見えます。
 - 所有する満足感(精神的リターン):高級品(≒ブランド品)ならではの作り手のこだわりが詰まったモノは、日々の生活に彩りを与え、自己肯定感を高めてくれます。
 - リセールバリュー(資産性): 一部の高級品は価値が落ちにくく、手放す時にお金が戻ってくる可能性があります。
 
長く使うほど、愛着も湧きますよね
投資家が突きつける「機会損失」という現実
ここまでは、誰もが納得するメリットでしょう。しかし、投資家はこの話を聞いた時、頭の中である計算を始めます。それが「機会損失(きかいそんしつ)」です。
機会損失とは、「もし別の選択をしていたら、得られたであろう利益」のこと。
50,000円の靴を買うか、10,000円の靴を買って差額の40,000円を投資するか。後者の場合、年率5%で10年間複利運用できたとすると、40,000円は約65,000円に増える計算です。
10年後には、「10年モノの靴」が手元に残るか、「そこそこの靴」と「金融資産65,000円」が手元に残るか、という大きな違いが生まれるのです。
【具体例】300万円の車を買うか、150万円の中古車+150万円の投資か
もう少し身近で、大きな金額が動く例として『車』を考えてみましょう。
- Aさん: 新車のコンパクトカーを300万円で購入。最新の機能と安心感を手に入れた。
 - Bさん: 状態の良い中古車を150万円で購入。浮いた150万円を全世界株式インデックスファンドで年率5%で運用開始。
 
さて、10年後、二人の資産状況はどうなっているでしょうか。
車の価値は年々下がります。10年後のAさんの車の価値は、数十万円になっているかもしれません。一方、Bさんが投資した150万円は、複利の力でどうなっているでしょう。
150万円を年率5%で10年間運用すると… 約244万円にまで増える計算です。
つまりBさんの手元には、『数十万円の価値になった車』と『現金(金融資産)244万円』が残るのです。この差はあまりにも大きいと思いませんか?
もちろん、新車には最新の安全性能や故障リスクの低さといった価値があります。
しかし、その裏でこれだけの金銭的な可能性を失っているかもしれない、という事実は知っておくべきです。
「安物買いの銭失い」と「自分軸」の重要性
もちろん、安いものを頻繁に買い替えることのデメリットもあります。
「安物買いの銭失い」という言葉があるように、すぐに壊れてしまっては元も子もありませんし、新しいものを探す『時間』や『手間』もコストです。
何より、愛着の持てないモノに囲まれた生活が、心を貧しくしてしまう側面も否定できません。
だからこそ、「高いモノはダメ」「安いモノが正義」と思考停止に陥るのではなく、これからお話しする「自分なりの判断軸」を持つことが何よりも重要です。
【結論】私のハイブリッド戦略「賢い消費者であり、投資家であれ」
「じゃあ、全部安いもので済ませろってこと?」
いえいえ、そういう極端な話ではありません。大切なのは、自分の価値観で判断の軸を持つことです。 そこで私が実践している「ハイブリッド戦略」をご紹介します。
1. モノを3つに分類する
まず、欲しいものを3つのカテゴリーに分けて考えます。
- 投資的消費: 使うことで満足感が高く、長期的に価値が持続する、あるいは価値が高まる可能性のあるモノ。(例:シンプルな腕時計、上質な革小物、修理して使える家具、長時間座る良い椅子など)
 - 消耗品: 流行り廃りがあり、数年で買い替えることが前提のモノ。(例:トレンドの服、スマートフォン、サブスクリプションサービスなど)
 - 浪費(趣味): 純粋に自分の心が満たされるためのモノ。(例:好きなアーティストのグッズ、趣味の道具、漫画など)
 
①は「良いものを長く」、②は「コストを抑え投資を優先」、③は「予算を決めて心から楽しむ」と、モノによって判断を変える考え方です。
【ポイント】大きな買い物で迷った時の「3つの魔法の質問」
何か大きな買い物をしたくなった時、私は自分にこの3つを問いかけるようにしています。
- 「5年後の自分は、これを本当に愛用しているか?」 (→ライフスタイルや好みの変化を想像する)
 - 「もしこのお金を投資したら、5年後いくらになるか?」 (→機会損失を具体的に計算してみる)
 - 「これは『見栄』や『不安』から欲しいものではなく、純粋に『必要』なものか?」 (→自分の本心と向き合う)
 
この3つの質問をクリアしたものだけが、本当の意味で私たちの人生を豊かにする「投資的消費」と言えると思います。
2. 「先に投資、残りで消費」を徹底する
そして最も重要なルールがこれです。
給料が入ったら、まず先にNISAなどの投資口座に一定額を自動で移す設定をしてしまいます。
「お金が余ったら投資しよう」では、いつまで経ってもお金は貯まりません。 「先に投資して、お金はなかったことにする」。これが資産形成の鉄則です。
まとめ:あなたのお金が、未来のあなたを創る
「良いものを長く使う」という価値観は、モノが貴重だった時代の素晴らしい知恵です。
しかし、誰もがスマホ一つで世界中の優良企業に投資できる現代においては、必ずしも最適な選択とは言えません。
大切なのは、思考停止せずに、一つ一つの買い物に対して「これは未来の自分への投資として、本当に価値があるだろうか?」と問いかける習慣です。
まずは証券口座を開設してみる、使っていないサブスクを一つ解約してその分を積立投資に回してみるなど、小さな一歩から始めてみましょう。
その問いの先に、モノにもお金にも縛られない、自由で豊かな未来が待っていると思います。
一緒にがんばっていきましょう!
  
  
  
  
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