いきなりですが、質問です。
「死ぬときに一番金持ちで、一体どうするんですか?」
少し、想像してみてください。
人生のゴールテープを切る、まさにその瞬間。必死に節約し、NISAやiDeCoで資産を増やし、銀行口座には過去最高の残高が輝いている…。
でも、鏡に映るのは、すっかり年老いた自分。体力は衰え、「いつかやろう」と思っていた海外旅行も、趣味への挑戦も、そのほとんどを先延ばしにしてきた後でした。
…これ、最高の人生だったと胸を張って言えるでしょうか?
「そんなの極論だよ」と笑うかもしれません。でも、これは将来の不安から「貯めること」に一生懸命になっている、真面目な私たち全員が陥りかねない、恐ろしいことです。
かくいう私も、この「墓場までお金を持っていくレース」に、危うく参加しそうになっていました。そんな私の目を覚まさせ、価値観をひっくり返したのが、ビル・パーキンスの著書『DIE WITH ZERO(ダイ・ウィズ・ゼロ)』でした。
大富豪が「ゼロで死ね」と語る理由
その衝撃的な提案をする本書の著者、ビル・パーキンスとは一体何者なのでしょうか。
彼は、ウォール街で大成功を収めた、ヘッジファンドのマネージャーです。エネルギー分野のトレーダーとして巨万の富を築き上げた、まさしく「お金の稼ぎ方」を知り尽くしたプロ中のプロ。
それだけではありません。
彼は高額な賞金を賭けて戦うポーカープレイヤーとしての顔も持ち、常にリスクとリターンを計算し、最適な判断を下す訓練を積んできました。
つまり、『DIE WITH ZERO』の哲学は、単なる理想論や精神論ではないのです。
金融のプロが、人生という壮大なゲームでリターンを最大化するために導き出した、極めて合理的かつ戦略的な「お金の使い方」。 だからこそ、彼の言葉には、私たちの価値観を揺さぶるほどの強い説得力があるのです。
この記事では、この衝撃的な一冊から学んだ、二度と戻らない「時間」を最高に活かすための「お金」の使い方を共有したいと思います。
私たちはなぜ「貯めすぎ」の罠にハマるのか?
そもそも、なぜ私たちは必要以上に「貯め込む」ことに必死になってしまうのでしょうか。
答えはシンプルで、「将来が不安だから」です。
老後2000万円問題1や年金制度への不信感。将来が不透明だからこそ、自分の身は自分で守ろうと、節約や貯蓄に励む。これは人間として、ごく自然な防衛本能です。
しかし、問題なのは、その不安が行き過ぎてしまうこと。いつしか「資産を増やすこと」自体が人生の目的になってしまい、そのお金を「何のために」使うのかを見失ってしまうのです。
『DIE WITH ZERO』は、ここで私たちにシンプルな真実を突きつけます。それは、私たちの人生を豊かにする資源は、お金だけではないということ。
- お金
- 健康
- 時間
この3つのバランスこそが、人生の満足度を決めます。若い頃は「健康」と「時間」は豊富ですが、「お金」が少ない。逆に、年を取ると「お金」はあっても、「健康」と「時間(=残りの人生)」は確実に失われていきます。
つまり、有り余る富を築いた頃には、そのお金で楽しめる最高の「健康」と「時間」は、もう手に入らないかもしれないのです。
この事実に、あなたは何を思いますか?
『DIE WITH ZERO』が教える「人生の満足度」を最大化する3つのポイント
では、後悔しない人生を送るために、私たちはどうすればいいのか?
『DIE WITH ZERO』が示す答えは、驚くほど明快です。私が特に重要だと感じた3つのポイントをご紹介します。
ポイント1:経験にこそ、最速で投資せよ
もしあなたが投資をしているなら、「1円でも多く、1日でも早く」投資することの重要性はご存知のはず。複利の力が、時間を味方につけてくれるからですよね。
『DIE WITH ZERO』は、この考え方を「経験」にこそ適用すべきだと説きます。
ブランド品や高級車のような「モノ」は、買った瞬間から価値が下がり始めます。
しかし、旅行、学習、人との交流といった「経験」は、「思い出の配当」として、私たちの心に残り続けます。そして、その思い出は、時間が経つほどに熟成され、人生を豊かに彩るかけがえのない資産となります。
特に、若いうちの経験は、その後の人生観やキャリアに大きな影響を与える「自己投資」としての側面も持ちます。だからこそ、経験への投資は、先延ばしにせず「(借金してでも)最速で」行うべきと語られています。
個人的には、借金してまで経験に投資するのはやりすぎかなと思いますが、著者はそれほど強く主張されています。
ポイント2:人生を年代ごとにデザインせよ(タイムバケッティング)
「いつか、世界一周旅行に行きたいな」
多くの人が抱く夢ですが、その「いつか」は、ほとんどの場合やってきません。
そこで有効なのが「タイムバケット」という考え方です。これは、やりたいことを「いつか」のリストに入れるのではなく、「どの年代でやるか」を具体的に決めてしまう方法です。
- 20代のバケット: 体力がなければ楽しめないこと(バックパック旅行、音楽フェスで踊り明かす)
- 30代-40代のバケット: 家族やキャリアに関わること(子供と全力で遊ぶ、リスクを取って起業や転職に挑戦する)
- 50代以降のバケット: 時間と知性を活かすこと(じっくり世界遺産を巡る、生涯学習に打ち込む)
人生という時間を有限な資源として捉え、どの年代に、どんな経験を配置するかデザインする。この視点を持つだけで、私たちの人生は「なんとなく過ごす日々」から「目的を持ったプロジェクト」へと変わるはずです。
ポイント3:ゼロから逆算して、計画的にお金を使え
本書のタイトルでもある「ゼロで死ぬ」。これは、無計画な散財を意味しません。
むしろ、「人生の最期に資産がゼロになる」というゴールを設定することで、逆算して、計画的にお金を使えるようにしよう、という極めて合理的な提案です。
厚生労働省のデータによると、日本の平均寿命は男性約81歳、女性約87歳2。もちろん個人差はありますが、一つの目安として、このゴールから逆算してみるのです。
「85歳で資産がゼロになるなら、70代では毎年これくらい使おう。ということは、50代の今、このくらいの経験にお金を使っても全く問題ない」
このようにゴールから考えることで、私たちは「将来のために貯めなきゃ」という漠然とした不安から解放され、「今の楽しみに、堂々とお金を使う」ことができるようになります。
NISAなどで将来への備えをしつつも、それが過剰になっていないか。この逆算思考は、私たちの資産計画に、健全な「出口戦略」を与えてくれそうですよね。
まとめ:墓場までお金を持っていくレースから、今すぐ降りよう
冒頭の問いにもう一度戻りましょう。
「死ぬときに一番金持ちで、一体どうするんですか?」
『DIE WITH ZERO』を読んだ今の私なら、こう答えます。
「意味がない。それどころか、最高の人生を送るチャンスをドブに捨てた『敗者』かもしれない」と。
もちろん、将来への備えは大切です。しかし、それはあくまで、人生を豊かにするための手段であって、目的ではないはずです。
この記事を読んで、あなたの心に少しでも何かが響いたなら、ぜひ最初の一歩を踏み出してみてください。
- 次の給料日に、いつもより少しだけリッチなディナーを予約してみる。
- 週末に、ふらっと日帰り旅行に出てみる。
そうした「経験への投資」も、私たちの人生を後悔のない、最高の物語に変えていくはずです。
お金だけに囚われず、人生を楽しんでいきましょう!
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